そして、十二の月が巡った。
朝。
「もう。卯月ったら、」
学生会長は、朝の公園で苦笑していた。
「こんな日まで来なくていいんだよ?」
「えー。だって、時間あるし。それに、ここに来ないと、なんか調子悪くてさー」
ミマが広げた大きな袋に、卯月は「これ入れて」と、拾ってきたゴミを突っ込む。
茶色の長い髪は後ろで一つにきっちりまとめられていた。シャツもパンツも女の子用のもので、可愛らしい意匠が施されている。
「変わるものねえ。一年で」
にやにや笑うミマに、卯月は首を傾げた。
「なんも変わってねーじゃん。相変わらずゴミひでぇぜ?」
「ゴミじゃなくて卯月がよ」
「あー。まぁ」
頬が少しばかり赤くなった。
ミマがさらに笑う。
「ん? さすがに恥ずかしい? だよねぇ。一年前は、卯月ったらゴミ袋の中に平気で頭突っ込んでたし」
「や。そこは別に今でも普通に突っ込めるぞ?」
「うわやめて」
真面目な顔をして今にも頭を入れようとするので、学生会長は急いで袋の口を握り締めた。
「言い方変える。身だしなみに気を遣うようなった。これでどう?」
「あ、そういう意味だったのか。……うん。そだな」
素直にうなずく少女の側に、女学生が小走りでやってくる。
「こっちのゴミも集めたよー。張り紙はいできた! はいこれ」
ミマはその子に「ご苦労様」とねぎらうと、また卯月に言った。
「卯月、もういいよ。気をつけて行ってらっしゃい」
「おう。なんか面白いもんあったら採ってくるからな」
ひらひらと手を振って駆け出す少女に、もうすぐ卒業の学生部長は「面白いもんって、特殊な虫や動物は要らないからね! みやげ話だけでいいんだからね!」と声を追わせた。
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