「何やってんだよー! 助けろよ誰かっ!」
ノウリジは、叫んだ。
「累機衆! お前ら消えてる場合か! 不思議の世界の可愛いユキハちゃんが、今や大変なことにっ!」
紅い青年は、立ち上がって地団駄を踏んだ。
「だったらお前が行けばいいではないか」
インテリジェは呆れて、眉根を寄せながら友を見上げた。
「私がお前ならば、考える間もなく動くが?」
ノウリジは、しかし、逡巡した。
「いや、でも」
紅い髪の青年は、うぶな女の子のようにもじもじする。
気味悪そうに顔をしかめて、友は聞いた。
「どうして迷っているんだ?」
「だって」
うわめづかいで、友を見る。
「この面々って、なんか……おかしくないか? おかしすぎるだろ?」
「どこがだ?」
インテリジェの間髪入れない問いかけは、ノウリジにとって、ひどく意外なものだったらしく、答えを返すのに数瞬を要した。
「ええ!? どこがって? ……おまえ、」
まず、あんぐりと口を開けたまま、相手に返す言葉を組み立て、やがて、とぎれとぎれで返答した。
「お前、正気か? なんでそんなこと聞くんだよ? もう。全体的に構成がおかしいだろ? 意味不明の単語も堂々と飛び交ってるし」
「おかしな世界だから、ひるんでいるのか? 賢者が? 星の主が? それは困ったことだ」
面白がるように、インテリジェが言う。
「お前お気に入りの雪葉に危険が迫っているのに? それでもか? 今助けないでいつ助ける? 今行かないでいつ行くのだ?」
なぜか、責めるように促されて、ノウリジは渋い顔になった。
「いや、助けるけどさ。助けるんだけれども。でも、なんか……、」
インテリジェは、それでも動こうとしない南の賢者に、同情半分の笑みを贈った。
「まあな。逡巡するのも、無理はないかもしれんな。たしかに、これはおかしい。あまりにおかしすぎて、危険すら感じる。その理由が明らかになるまでは動かないという、お前の理屈も、納得できはする」
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