「……ええー!?」
ノウリジは、虹色の珠の中に行ってしまった友の姿を、ぽかんと見た。
「なんであいつが向こうに?」
南の賢者は、まるで他人の夢の中に入ってしまったかのような、不可思議な気持ちになった。
どうやら、ユキハのいる世界の累機衆と新殻衛兵は、インテリジェの持ち物、だ。
でも。
「どうなっているんだ?」
ノウリジには、事態がまるで理解できなかった。
自分の方が先に、この異世界を見つけていたはずなのに。
覗き見する私を、インテリジェは呆れていたのに。
でも、その世界には、すでに、彼の持ち物が配されていた。累機衆と新殻衛兵が。ノウリジがここを発見したときには彼らはすでにいた。とういうことは、インテリジェは、私よりも早く、この世界を知っていたのだ。
なのに、なのにだ。
なぜ、彼は何も知らないような顔でいたのだろうか?
「あいつ、なんのつもりなんだ?」
疑問は、まだある。
どうして、この異世界では、賢者の持ち物である累機衆と新殻衛兵とが敵対しているのか。
苦界だの、溜の属性だの、英界の法だの、聞いたこともない言葉がなぜ横行しているのか?
そして、蜃気楼のような街。何の疑問も持たずにそこで暮らしているユウジン。
……そして、ユキハ。
北の賢者は、彼女のことを知らないどころか、知っているどころか、それ以上だったではないか。
どうやら、彼の巫女だ。賢者の隣にある物。
ノウリジは、顔をしかめた。まるで、砂を食べさせられたかのように。
「全てがわけわからんが、とりあえず、これだけは言えるな」
紅の賢者は軽く数回うなずき、大きく息を吸い込むと、虹の珠に向かって叫んだ。
「人のこと言えんだろうが! お前こそ少女趣味だっ!」
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