万の物語/二万ヒット目/北の空二万の星〜白い星の隠し巫女〜

北の空二万の星〜白い星の隠し巫女〜

すぎな之助(旧:歌帖楓月)


18

「……ええー!?」
 ノウリジは、虹色の珠の中に行ってしまった友の姿を、ぽかんと見た。
「なんであいつが向こうに?」
 南の賢者は、まるで他人の夢の中に入ってしまったかのような、不可思議な気持ちになった。
 どうやら、ユキハのいる世界の累機衆と新殻衛兵は、インテリジェの持ち物、だ。
 でも。
「どうなっているんだ?」
 ノウリジには、事態がまるで理解できなかった。
 自分の方が先に、この異世界を見つけていたはずなのに。
 覗き見する私を、インテリジェは呆れていたのに。
 でも、その世界には、すでに、彼の持ち物が配されていた。累機衆と新殻衛兵が。ノウリジがここを発見したときには彼らはすでにいた。とういうことは、インテリジェは、私よりも早く、この世界を知っていたのだ。
 なのに、なのにだ。
 なぜ、彼は何も知らないような顔でいたのだろうか?
「あいつ、なんのつもりなんだ?」
 疑問は、まだある。
 どうして、この異世界では、賢者の持ち物である累機衆と新殻衛兵とが敵対しているのか。
 苦界だの、溜の属性だの、英界の法だの、聞いたこともない言葉がなぜ横行しているのか?
 そして、蜃気楼のような街。何の疑問も持たずにそこで暮らしているユウジン。
 ……そして、ユキハ。
 北の賢者は、彼女のことを知らないどころか、知っているどころか、それ以上だったではないか。
 どうやら、彼の巫女だ。賢者の隣にある物。
 ノウリジは、顔をしかめた。まるで、砂を食べさせられたかのように。
「全てがわけわからんが、とりあえず、これだけは言えるな」
 紅の賢者は軽く数回うなずき、大きく息を吸い込むと、虹の珠に向かって叫んだ。
「人のこと言えんだろうが! お前こそ少女趣味だっ!」


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