女子高生の異世界召喚「君こそ救世主?」物語
Magic Kingdom

歌帖楓月



24 魔法が使えない証

「ね、じゃあ、シルバースターは持っていないの?」
 そうだ、シルバースターの方を持っているかもしれない、と思いつき、明理沙がそう言ってみた。その話題には救いがあるような気がしたからだ。
 だがしかし、カイは目に見えて引きつった。
「も、持ってないよ! あんな迷惑なものはいらない。欲しくないよ」
 明理沙はしまった、と思った。
「そうだったの? ごめんね、変なこと聞いて」
「いや、変とかじゃないけど。ああ、びっくりした」
 そんなシルバースターとは、一体、どんな証なのだろう? 
「シルバースターって不幸な証なの?」
 そう尋ねると、カイは、どう言うべきか逡巡したが、白状するような顔をして頷いた。
「うん。もらった本人には良いことは一つもないよ。シルバースターってのは、『魔法が使えない証』って感じだから。それまで魔法がどんなに使えたとしても、それをもらった途端、ゴールドスターをもらえなかった人間よりも魔法が使えなくなってしまうんだ」
 それは大変だ。
「じゃ、クジにたとえるなら、ハズレって感じなの?」
「ハズレよりも性質が悪いよ。ただ魔法が使えなくなるだけじゃなくて、ある使命のために魔法が使えなくなるんだ。行動の自由も無くなるんだよ。シルバースターが降って来た人間には」
「使命ですって?」
 うん、とカイはうなずいた。
「知りたい? 明理沙」
 謎は解いておきたいので、明理沙はすぐに「うん」と返事をした。
「世界一の魔法使いのそばに始終ついていないといけないんだ。世界一の魔法使いが、魔法で悪いことをしないように監視する役割が、シルバースターを与えられた者の使命なんだ。世界一の魔法使いが生きている限り、その使命は終わらない」
「じゃ、例えばその世界一の魔法使いが死んだら、シルバースターをもらった人は、自由になれるの? 使えなくなった魔法も使えるようになるの?」
 明理沙の問いに、カイは、首をひねった。
「さあ、そこまでは知らないよ。どうなのかなあ? 自由になれるのかもしれないけど。よくわからないなあ」
「ふうん」
 ひらひらと、暖色の落ち葉がどんどん降ってくる。
 カイはふと笑って「そうだ、ここまで教えたのなら、君を呼んだいきさつもちゃんと話さなきゃ」とつぶやいた。
「いきさつ?」
「うん。僕の挫折の話さ。君をこの世界に呼ぶ前ね、僕は一人で王を決められると思っていた。だけど、王は、僕一人では選べなかった。エフィルに渡そうとしたんだけど、そうするとなぜか、水晶は僕の手元から消えてしまうんだ。もしかして、王に相応しいのは他の候補者かもしれないと思って、試しに何人かに持たせてみたんだけど、やっぱり同じだった。これが王の水晶玉だとは教えなかったけど」
「そうね。教えたら大変なことになりそう」
 カイは、明理沙のしみじみとした頷きように、えへへと微笑み、ひょいと空を見上げた。青い青い空だ。カイは、また、口を開いた。
「そして、どうしようもなくなったある日。まあ……二か月前のことなんだけど。僕は王宮の書庫で、ある書物を見つけた。それは子供用の本で、多くが作り話だった。けれどその中の一つに、今回の様な状況での王選びの話があった。子供向けの物語だと思って、初めは信じなかった。だけど、時間がどんどん無くなっていき、もう、僕一人ではどうしようもなくなった。だから僕は、この際、伝説でも作り話でも、可能性があるのなら、試そうと思ったんだ。それに、父さんが死んだときに僕の手の中に生まれた3個の水晶玉、これがあるかぎり、どんな形であれ、次の王は絶対にいる。僕一人では継承させられないだけで」
 カイは目を細めて、ゆっくりと唇を噛んだ。そして、明理沙を見た。
「ごめんね明理沙。僕の思いつきで、君をこんな世界に連れて来て。大変な目に遇わせたりして」
 明理沙は、首を振った。
「ううん。うん、怖い目にあったけど、いきなりこの世界に連れて来られていきなりそんな目に遇ったわけじゃなくて、カイが私を呼んだ理由を教えて、私は納得して……。そしてカイはずっと、私を助けようとしてくれてたでしょ。だから、あたしは全然切羽詰まって無かった。これは当たり前だけど。でもカイは切羽詰まってた。それであたしは納得した。大変みたいだから、頼みを聞こうって。だからさ、カイ。王様を探そう? ね? あたし、あなたのために、王様を探してみるから」
 明理沙がそう言っているうちに、カイの目から涙がぽたぽたぽたぽた落ちていった。
「ありがとう……ありがとう、明理沙」




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