二人はそれぞれに部屋をあてがわれた。城の上階、廊下を挟んで向かい側の部屋を。
「おやすみなさい、また明日ね」そう言って、案内したシルディは自室に帰った。
二人は廊下に立ったまま、お互いの顔を見合わせた。
「久しぶりにちゃんとした所で眠れるね」
「うん。よかったね。明理沙」
二人とも疲れた表情だが、笑っている。
「じゃあお休み」
「うん、お休み」
夢を見た。
「兄様、もう私はここにはいられなくなったの。もっと暗いところでなければ駄目になったみたい。……さよなら、兄様」
金色の髪のこどもが、笑う。
「そんな、ティカ……」
かすれた声を出すと、笑っていた妹の姿も、かすれた。
「ティカ!」
「さよなら兄様」
悟った口調でこどもはそう言う。いまだ自分の影にもがく少年は叫ぶ。
「ティカ! ティカ、待っててくれよ! 僕は絶対に……!」
ぜったいに、王を見つけて、そして、
……いったいだれを、すくうのだろう?
夢を見た。
「わたしはもう死んでるんだよ?」
自分が目の前に立っていた。
「そんなことない」
「死んでるんだよ。じゃあ、生きているっていう証拠が、どこにあるの?」
証拠なんて無い。
私はここにいるけど、ただそれだけで。それは証拠とはいえなくて。
「ほら答えられないでしょう? わたしはもう死んでるの」
否定も肯定もできない。
こんなどっちつかずの状況に、不安が増す。
わたしは、いきてるんだろうか? 今。
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