女子高生の異世界召喚「君こそ救世主?」物語
Magic Kingdom

歌帖楓月



53 ルイル叫ぶ

「ぎゃああ! なんてことだいっ! 全部、蝋になっちまってるじゃあないか!」
 錦の織物のように美しく紅葉した楓の葉が全て木から吹き飛ばされんばかりの、大舞台向きのよく通る美声が響き渡った。
 ここはルイルの屋敷。彼女の家の周辺は、いつも秋だ。静かに思索しつつ散策をするに相応しい、実に趣深いしっとりと落ち着いた風景。色づく木々のそこここに、命の炎が燃えている。自然、その美しさにため息が漏れる。
 だが、彼女の屋敷の内側では、そんな情景などとは無関係に、阿鼻叫喚の蝋地獄が展開されていた。
「床も壁も柱も瓦も! 全部蝋になってるじゃないかい! ぎゃー! 毒入りリンゴまでも蝋になっちまってる! これじゃ誰も食ってくれやしないよ!」
 なんと、部屋の隅にふわふわ転がる綿ゴミまでもが蝋になっている。ここまで徹底して蝋だと、冗談のようにこっけいだ。
「どうして私がこんな目に遇わなきゃならないんだい!」
 自業自得とは露ほども思わない彼女だった。
「おのれえええ! リディアスめ!」




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