明理沙はすやすやと眠っている。
彼女の寝台の回りに、薬草をまいたリディアスは、少女の寝顔を見下ろした。
興味深い娘だと思う。
こちらから見ればまだ幼いのに、こちらの意図をよく理解する。あの王の息子と二人で私の目の前に立ったときも、片方に相反して、まともな答えを返した。
リディアスは、カイが異世界から少女を呼んだことに、呆れた。
先の王の子供が、「早く王が決まらないと世界が崩壊する」と思い込んで実行した所業だと聞いたときには失笑した。
実際のところ、「世界を流れる力」のことがわからない者が王になれば、間違いなくマジックキングダムは崩壊する。
何も知らない人間が、王を選んではならない。
王の子供は、わざわざ一番崩壊の可能性が高い選択をしたのだ。
そして、この少女が城にやって来た。
すこし意外なことに、面白い子だった。
切羽詰まった恐怖にかられた少年が、異世界中捜し回って見つけた頼みの綱。
しかし、頼みの綱にしては、平凡な少女だ。
まだあどけない少女の寝顔を見下ろす。
彼女はこの世界の救世主、などではない。あの子供にとっての救世主なのだ。
つまり、王の息子のあせりに、マジックキングダムの未来が巻き込まれた。そういうことなのだ。
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