女子高生の異世界召喚「君こそ救世主?」物語
Magic Kingdom

歌帖楓月



82 虚無の喜び

「御力って、そんなに重要?」
 暗闇で独り、少女は嗤う。
「ティカは可哀相? シルディが大切?」
 星の光も届かない闇。
「うふふふー。あ・た・し・は、どれも邪魔っ!」
 黒髪の少女は、指折り数える。
「えっと、名前は忘れちゃったけど。エフィル様のお父さんとお母さんは、マジックキングダムのために死んで、駄目になっちゃいました! あはは!」
 一つ。
「優しい桔梗の君は、あたしに騙されて死んで悪霊になって、お人形になって駄目になりましたー! ばかねー?」
 二つ。
「優等生シルディは、シルバースターになっちゃって、駄目になりましたっ! いい気味ーっ!」
 三つ。
「生意気ティカは、父王を助けるために魔法を使いすぎて、駄目になりましたーっ! ざまーみろっ!」
 四つ
 少女は嗤う。
「のこりは、たった、たった一つ!」
 楽しそうにはしゃぐ。
「真っ白の、エ・フィ・ル・様だけーっ! うふふふふ!」
 しかしその嗤いは、凶刃で一閃したかのように、突然とぎれた。
 そして、鋭く凍りついた声が響いた。
「エフィルを駄目にすればおわり。どうしてやろうかしら?」
 だけど、と続けた声は愛らしい少女のものに豹変していた。
「だけど、エフィル様は真っ白だから黒魔法が効かないの。呪い殺せなくって残・念! 世界のためっていうお題目で死んでもらうのも、ご両親とおんなじでしょ? それじゃつまんなーい! どうやったら駄目にできるかなーって、色々がんばったんだけど、私じゃエフィル様は駄目にできない」
 けらけらけら、と、いっそ無垢なほどに楽しげな笑い声がはじける。
「白いのなんて大嫌い。御力なんて無くなってしまえばいい」
 マジックキングダムを包む、虚無のように。




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