女子高生の異世界召喚「君こそ救世主?」物語
Magic Kingdom

歌帖楓月



89 銀の星の物語5

 世界の幹から戻って以来、シルディは考え込むことが多くなった。
 不可解なリディアスについて。
 かつて同級生だったときには、彼を気にすることなど、ほとんどなかった。
 教室の片隅、いてもいなくてもわからないほどに静かな彼。良く欠席していたことだけは印象に残っていた。
 そう、卒業間近の「時魔法」の件で、彼が、隠していた力を表して見せて、それで初めてシルディは彼を同級生として認識するようになったといっても、過言ではなかった。
 しかし、今。
 彼は、シルディの心を混迷の小道に導いている。
 どうして?
 どうして、ハニール・リキシアは彼を主に選んだのだろう?
 世界で一番、力があるから?
 誰も見たことのない魔法を使うことができるから?
 たしかに、それは誰もが納得できる理由ではある。彼は比類ない力を持っている。
 でも、力量のみで主を選ぶというのでは……光輝の妖精らしくないではないか。
 彼女の心を引きつける他の理由があるのだろうか?
 あると思う。
 あるに違いない。
「ね、」
 そこに、少年の透明な声が耳に届いた。
「シルディ? どうしたの?」
 まだ声変わりしていない、高い声。
「え?」
 シルディは、はっとした。
「……ごめんね。ぼうっとしてたわ」
 しまった。
 自分は、エフィルに白魔法を教えにきていたのだった。
 どうしてこんな。
「シルディは、」
 エフィルが首を傾げて口を開いた。丁寧な口調が、ほっと心地よかった。
「世界の幹に行った後から、考え事することが多くなったね?」
 少年の澄んだ瞳が、申し訳無さそうに陰る。
「……ごめんね、シルディ。僕が代わりに行けたらよかったのだけど」
「違うわ、エフィル」
 シルディは、すぐに首を振って、笑って否定して見せた。
「違うの。違うのよ。それとは関係ないの。大丈夫。謝るのは私の方だわ。ごめんなさい。今は白魔法を教える時間なのにね」
「僕、」
 エフィルは若草色の瞳に輝く真剣な光をシルディに見せた。
「僕、早く一人前になるからね」
 シルディは、頼もしい教え子に賞賛の笑みを浮かべる。
「うん。エフィル君ならすぐだよ? エフィル君の魔法は、本当に真っ白なんだもの」
 少年の白魔法の輝きを頭に思い浮かべると、曇り空が晴れるように心が爽快になる。シルディは「ほんとにすごい子だわ」と、彼の才能をまぶしく思った。
「必ず、ご両親のような白魔法使いになれるわよ」
 今は考え込んでる時じゃない。素晴らしい後輩の成長に、できる限り手を貸さなければ。
 シルディの言葉に、エフィルは頬を染めた。
「ありがとう。シルディ、僕、頑張る」
「ええ、楽しみにしてるからね」




←もどる ★ 次へ→
作品紹介へ
inserted by FC2 system