その日は、明るく澄んだ青空だった。
シルディは、その日のことを、忘れない。
いつもどおりの一日。気の置けない同僚と連れ立って慣れた仕事をこなし、王宮に戻ると王子と王女の遊び相手をつとめて……。
そうして、それまでの日常が、終わったのだ。
蒼穹が、夜の侵略を受けて、その身を朱に染めた。
その夜の空を、今でも覚えている。
全天に、白銀の星々がたわわに実って輝き、闇をかすませていた。
白く輝く夜だった。
マジックキングダムの住人は、一生に一度、夜空に誓いを立てる。そうして、魔法使いの証を手に入れるのだ。適わぬ者もいるけれど……。
シルディは、今日の夜空に、惹かれた。
何てきれいな夜空だろう。
まるで、世界を流れる白銀の力。
この空は、白い魔法に、とてもよく似ている。
私が望む、魔法使いの姿に、とてもよく似ている。
だから、シルディは、夜空に誓いを立てた。
年は18になっていた。
18の年月のうちで、いちばん白く美しい夜だったのだ。そして、これからも、こんな夜は二度と来ないと、そう思ったのだ。
だから、シルディは、夜空に誓いを立てた。
そして、白い夜空は、シルディに、銀の星を降らせた。
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