女子高生の異世界召喚「君こそ救世主?」物語
Magic Kingdom

歌帖楓月



92 銀の星の物語8

 マジックキングダムを包む御力。その外にある、虚無の闇。
 そこであった出来事。
 銀の星も、光輝の妖精も、このことは知らない。
 知っているのは、闇の少女と、世界一の魔法使いだけ。
 ……銀の星が降った夜に、虚無の闇で遭ったこと。
「もーッ。もぉーッ! キラキラ光ってて、うっとうしーいッ!」
 そこにいるユエは、不機嫌だった。
「こぉんなの。ユエは絶対イラナイ。だいっ嫌ーい!」
 はーあ、と、大きなため息をついた。
 右手に白銀の光。
 シルディが今しがたまでその身に宿していたもの。
「でもぉ、」
 ククク、と、桃色の唇から、どす黒い嗤いが漏れた。
「これ、ゴミバコに捨てちゃったら、みぃーんな困るだろぉなぁ。ぜっーたいに、困るだろうなぁ」
 シルディの身から抜かれて、世界一の魔法使いに渡るもの。そのはずだった、もの。
 ユエはそれを奪っていた。世界からそれを奪っていた。
 深更。白い夜の下で、白い魔法を使う娘が、星に誓った。
 星は誓いを受け入れた。
 娘にふさわしい星を。
 それは銀の星。
 娘の力を抜き取って、世界一の魔法使いに与える。
 世界一の魔法使いを、彼女が治める。
 その白い心で、世界一の魔法を使える、ように。
「あーやだなぁ。やだやだ。ユエは、御力も白魔法も、だいっ嫌ーい!」
 ユエは手の中の光を、握りつぶした。光は消えはしないが、心は少し晴れた。
 こんなもの無くなれ。
 消えてしまえ。
 マジックキングダムを流れる力も、良き力も。
「ぜんぶこわしちゃえ。ぐっちゃぐちゃに壊れちゃえ!」
 シルディから抜き取られた白い力。
 ユエはそれを横取りした。ほんとうなら、リディアスが受け取るはずのその力を。
 待っていたのだ。彼女が星に誓うその時を。
 星が彼女から抜き取った力。ユエは、奪って、手に入れた。
 ユエは嗤う。
「白魔法使い狩り。今度も大成功ー。あの憎ったらしい金糸の君とかいうガキも、これで白魔法が使えなくなる」
 よかったねー、と、ユエは笑う。自分に向かって。
「ユエ、よかったね。これで世界はまた一つ、白から遠のいた」
 虚無の闇、その心地よさに、ユエは目を細めた。
「何も無くなっちゃえばいい」
「どーやって捨てようかしら? おうちのゴミバコにポーイしちゃおっかしら!」
 虚無の闇の中で、ユエは嬉しそうに、手の中の銀の光をこねくり回した。
「シルディの力を、ユエがゴミバコにぽい! うふふふ!」
 ユエは笑う。
「シルディが今まで真面目に頑張って前向きに一生懸命、キヨラカに成長して身につけた、きれいなきれいな力を、……わたしがごみばこに捨てちゃうの!」
 嗤う。
 それは、歪んだ悦び。
「ふふふふふ」
 リディアスのばーか、とつぶやいた。
「おまえになんかやらない。おまえなんかだいきらいだ」




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