シンデレラの足に刺さった沢山のガラスの破片を、召使いがピンセットで一つ一つ抜き取っていく。それらは全て同じ形をしていた。人の爪のような形で、爪の先にあたる鋭く薄くなった部分が、皮膚に食い込んでいる。
「動きさえしなければ、こんなことにはならないのに」
ピンセットを持つ一人がつぶやいた。抜き取ったガラスの爪を、二つあるガラスの箱の一つにカツンと落とした。
一人は、バケツに貯めた水で、脱がした靴を洗っている。透明だったバケツの水は赤褐色に染まっていた。
「それは、また使うの?」
ピンセットを持った召使いに、靴を洗う方が尋ねた。
うなずきが返った。
「そうよ。はめなおして履かせるわ」
「……」
バケツの中に浸けられていたガラスの靴を持ち上げ、靴底を見ると、底は格子状になっており、一つ一つの爪が入る小さな長方形の穴が、規則正しくみっしりと並んでいた。
一人が、ぽつりと言った。
「もう、掃除をしながら私たちと遊んでくれることもないのね。ここから出られないのだもの」
誰も返答しなかった。ただ、目を伏せて、自分たちの仕事をした。
靴を洗う音と、ガラスの爪を落とす音だけが、しばらく響いた。
「さ、終わった。次は左足ね」
「水を汲んできてちょうだい」
「右足の方は手当するわ」
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