「プリムラ様!大変でございます!あの男がプリムラ様の部屋に!」
城のサロン。ローズを踏み付けにしているプリムラのところへ、召使いが駆け込んで来た。
「放っておきなさい」
プリムラは、踏み締める足に力を込めながら、ふわりと髪を振って答えた。
「でも!」
召使いが言い募る。
「シンデレラがおります!私共が隠したのですけれど、もしも見つかったら、」
必死の召使いに、プリムラは、冷然と視線を返した。
「シンデレラに手を出したらただでは済まさない、それだけよ。私にはね、この愚かな子に教えてやることが、まだ残っているの。部屋に戻るのは、その後のことね。人を2人呼んでちょうだい。この重い女を引きずって行くのよ」
「うわああん!痛い痛い!助けて、助けてよう!」
足下のローズが、悲鳴を上げる。やって来た召使いの方を見て、ぎゃあぎゃあ叫んだ。ローズは、召使いが助けてくれないかと思って大仰に泣いてみた。しかし、召使いは振り返ることもなく部屋を出て行った。
プリムラは、見下して微笑んだ。
「そんな悲鳴、そのうちに上げるのも馬鹿馬鹿しくなってくるわ。せいぜい今のうちに、泣きわめいていることね」
「プリムラ様、お待たせしました」
別の召使いが2人、サロンに入ってきた。出て行った召使いは帰って来ない。プリムラの部屋に戻ったらしい。
「客室まで連れて行って」
プリムラは、ローズから足をどけると、歩きだした。
ローズの首には、内出血による真っ赤なあざができていた。
召使いたち二人は、仰向けになっているローズの両足を引きずっていく。
「ちょっとお!なにするのよん!」
ローズは顔を真っ赤にしてどなった。
片足ずつを抱えた二人は、冷たい無気質な目で、ローズを見下ろした。これまでずっとしてきた、恭しい態度を見せることはなくなっていた。
「だまれ。そうぞうしい」
家畜に命じるような口調で、どちらかがそうつぶやく。
ローズは息を呑んだ。
そしてローズは刑場に向かうように引きずられていった。
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