「ああああ!」
自分の叫び声で、フローレンスは目を覚ました。
何人かの誰かが周りに立ち、上体を押さえ付けている。足の平に、焼け付く痛みが走っていた。
ここはどこだろうか?仰ぎ見えるは、白い服を着た体と、白い天井。天井では奇妙な銀の配線が、直線と直角の文様を描いていた。
薬品の匂いがする。
どこ?
「あああっ!」
フローレンスは身を捩った。
足の平に熱くはない何か濡れた布のような物が触れるたびに、焼け付く激痛が走る。
「よし。処置終わり。保護剤を塗って包帯を巻いて」
知らない男の声がして、足に温くてねっとりしたものがつけられた感覚がした。
体を押さえていた人の体が除けられた。
白いマスクをはめ、白衣を着た男たちが4人、ずらりと並んで、フローレンスを見下ろしていた。
「……、ここは、どこ、ですか?」
フローレンスはつぶやいた。
男たちの一人が応えた。口はマスクで見えないが、目が微笑んでいた。
「王宮ですよ、お嬢さん」
フローレンスは、すぐには言葉の意味を理解できなかった。
「おうきゅう?」
白い男はマスクを取って微笑んでみせた。思いの外若い男だった。
「王の住まいです。ここはその中にある病院です。私は医者。あなたは助かったのですよ。カールラシェル教授のお嬢さん」
父の名を聞き、フローレンスは目を見開いた。
「……どうして」
処置台から起き上がろうとするフローレンスに、男たちが背に手を添えて助けた。血塗られていたドレスは着せ替えられ、医療用の白い前合わせの寝間着になっていた。両足は包帯を巻かれるところだった。
部屋は白だった。そして、銀の器具があちこちにある。
「魔法使いが救ったのです。呼んで参りましょうね」
一人が、部屋を出て行った。
フローレンスは首を傾げて考えた。王宮の魔法使いが?どうして?
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