シンデレラ2

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

66 終の棲家7

 そして、化粧室には、継妹が倒れていた。

 扉は壊されて外れ、部屋の中に転がっていた。
 化粧室の床は、血に染まっていた。
 ローズは、その血の上で、白目をむいていた。
 喉をかきむしって真っ赤なミミズ腫れを何本も作り、絨毯をかきむしって毛足をぼろぼろにして。
 すでに死んでいた。
「これが、魔女の血よ」
 プリムラは絨毯を指さす。
 妹の方は見ずに。
「真珠に化かした魔女の血を、酒か水に溶かすの。最初は透明。けれど、時間が経つに従って、それは血に戻る。魔術が掛けられた魔女の血に。この血色に戻ったときに、毒として作用するの」
 プリムラは、自分の腹の中にたまった毒を吐き出すように、苦く言った。
「父が若いころに、魔女に作らせたらしいわ。隠れるように生きていた魔女をだまして、命を差し出させて」
 そして、妹を見下ろした。
「馬鹿な子。化粧室に入ってはいけないと母親に言い付けられたのに。」
 プリムラは長くため息をついた。
「なんのつもりで入ったのかしら」
 表情に変化はなく、瞳には涙もなかったが、プリムラは悲しんでいるようだった。
「結局、あの女の道具のままで……死んだのね」
 医師は、わかりきった死を確認すると、プリムラを見つめてつぶやいた。
「かわいそうにね。まだ、これからなのに」
 プリムラは、うなずいた。
「ええ。ありがとう」



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