シンデレラ2 後日談3
axia 〜 天女降臨/魔女墜落 〜

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

48 axia 〜たいせつなもの〜

「きっと、今日も唄ってるわね」
 フロラは赤ん坊を抱きなおすと、窓外の茜空を見つめて、微笑んだ。
 父が遺した子守唄。
「父様、子守唄は、みんなが唄うようになったよ」
 空につぶやいて、フロラは、機嫌良く笑っている娘に、「ね?」と声を掛けた。
「あなたも、おじいちゃまの歌、大好きだものね?」
 そこに、夫が帰ってきた。
「ただいまー」
 小さな女の子を連れている。
「お帰りなさい、ファウナ。こんばんは、プリシラ」
「こんばんは、フロラ様」
 きちんと礼儀正しい女の子に、若い母親は苦笑した。
「小さなあなたから丁寧に呼ばれるのは、慣れないわね」
「どうかお気になさらないでくださいな」
「ええ。努力するわね」
「ハハハ」
 ファウナは明るく笑いながら、プリシラの髪を撫でた。
「『姫君にお会いしたい』っていうから連れてきた」
「では、夕食も一緒にいかが?」
「いいえ」
 プリシラは首を振った。先ほどまで空色だった髪が、徐々に色を変えてきた。
「家で、ママ……母が、待っておりますから」
 小さな魔法使いの素直な言葉に、フロラは微笑んだ。
「そうよね。まだママが一番。それを聞くと、ほっとするわ」
 プリシラは照れて頬を赤らめた。
「今日は一度もお会いできなかったので、挨拶にまいりましたの」
 日が沈む。
 魔法使いの髪が、月の光のように優しい金色に輝いた。
「ご機嫌麗しゅう、アクシア様」



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