シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

1 朝の風景1

「いつまで寝ているつもりなの!」
 早朝。
 小鳥の歌声。
 白みかげ石で造られた明るい色の屋敷。
 みがきあげられた天窓から朝日が射し込む部屋。
 柔らかな乳白色の壁紙。
 雪の結晶のように繊細なレースのカーテン。
 霧にかすんだ草原のような薄緑の、長い毛足のじゅうたん。
 小さな花々が彫刻された、やさしい雰囲気の木の家具。
 水鳥の羽毛が詰められた絹の寝具。
 その中で、大きく響き渡る怒鳴り声だけが、異質だった。
「!」
 フローレンスは、驚いて飛び起きた。
 辺りを見回す。
 この部屋には、彼女一人しかいなかった。
 つまり、彼女に対する言葉ではなかった。
 安堵と共に、苦笑が浮かぶ。
 過去の記憶を思い出して、ふっと重く息をついた。次に、今の環境を思い返して、少し微笑む。
 フローレンスことフロラは19歳になった。朝の清冽な空気のように白い肌。ゆるやかに波打つ白金色の長い髪。北の海のように深い青の瞳。
 薄い色彩の部屋が良く似合う、きれいな乙女だった。それだけでなく、瞳の奥には知性の光が宿っている。
 そのフロラは、急いでベットを出た。
 雪白の絹布で丁寧に作られた寝間着に、溶けない氷のような薄水色をした上着を羽織り、部屋を出る。
 そして、右隣のさらに隣の部屋へ向かった。



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