シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

101 イチゴのタルト

「ええ。ありがとう」
 フロラは恥ずかしそうに微笑み、鍋つかみをはめて、鉄板を取り出す。
 重石を乗せられた、甘い香りのする食べられる器が、いくつも並んでいる。重石を取り除いて、バターの香り漂うタルト皮だけを、今度は金網の上にのせて冷ます。
「何、作ってるの?」
 愛想も何も無い、ぶっきらぼうな問いかけに、フロラは優しく微笑みながら答える。
「果物のタルトよ。食べたことあるでしょう?」
「あるわね」
 そっけないうなずきが寄越される。
 それを微笑みがふわりと受け止める。
「食べてみる?」
「くれるの?」
「ええ」
 フロラは、冷ましてあるタルト皮を取って、カスタードクリームを乗せた。
「果物はどれがいい?」
 見上げて微笑みかけると、魔女は目をそらした。
「……なんでもいいわ」
「じゃあ、イチゴが新しくておいしいから、それにするわね」
 真っ赤に熟した瑞々しい小ぶりのイチゴを、なめらかな卵色のクリームの上に五つのせて、香りの良い酒で解いたジャムを塗る。
 できあがったイチゴのタルトを、フロラは微笑みと共にさしだした。
「はい」
 白い可憐な手から、美しい指が受け取った。
 魔女は、ひどく言い難くそうにつぶやいた。
「……ありがと」



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