シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

102 お茶とお菓子と姉妹

「お茶を入れるから」
 やかんに手を掛けるフロラを、プリムラは制する。
「いいわよ自分で入れるから。それ……続けなさいよ」

「今日はお休みでよかったわね。プリムラ」
 フロラは、流し台の上でタルト皮にクリームや果物をのせながら、静かに微笑み、話しかける。
「別に」
 プリムラは腰に両手をあてて、火に掛けたやかんを見下ろしている。
「昨日も大変だったわね。大丈夫?」
「平気よ」
 にべもない答えだが、フロラは気分も害さずにそっとうなずいた。
「そう」
 そこでしばらく、言葉が途切れた。
 熱くなっていく水の動きでわずかに震えるやかんの音だけが響く。
「ねえ」
 プリムラが、少し離れた右隣に立つフロラに、声をかけた。
「なあに?」
 フロラがプリムラの方を向く。
 プリムラはやかんを見下ろしたままだった。
 そして聞いた。
「さっき、何考えてたの?」
 フロラは、動きを止めた。
「え?」
 プリムラが表情なくフロラの方を見た。
「あなたが鉄板に手を出した時よ」
 フロラは、寿命が尽きて落ちる木の葉のように、目線を床に落とした。 
「昨日の舞踏会……いいえ、ファウナス王子のこと」
「ああ」
 プリムラは、つまらなさそうにうなずいて、興味がなさそうに聞いた。 
「だから、昨夜からずっと変な顔してたのね。何か言われたの?」



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