「師匠である私が弟子のあんたのために、わざわざ時間を割いて入れてやったお茶よ。どうぞ?」
紅茶一杯に、茶葉一ヶ月分くらいの恩を着せて、クリスティーナはプリムラにカップを渡した。
はらはらするほど豪快な茶の入れ方だったが、できた紅茶は、ルビーのように赤くそして澄んでいた。
一見、おいしそうに見える紅茶に、腑に落ちないものを感じながら、プリムラは受け取った。
「お手数お掛けしました。師匠」
「毒も魔法も使ってないわよ。ひとえに私の技術ね」
プリムラは、それには返答しなかった。
一応飲んでみる。
……おいしい。
魔女は、カップに残った赤い液体を無言で見下ろす。
クリスティーナはにっこり笑った。
「何よ? その得体の知れない物を見るような目は」
「別に」
表情のないプリムラへ、握りこぶしが伸びる。
「素直に『おいしゅうございます。お師匠様』と言えば済む話でしょう?」
プリムラはこめかみを小突かれた。
「やめて」
嫌悪感をあらわにした魔女の言葉を、魔法使いは涼しい微笑みで受けた。
「やめてもいいわよ? ここから追い出そうかと思ってたところだったの」
魔女は、銀の目を見開いた。
「どういうこと?」
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