シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

109 令嬢三度

「ファウナス王子様は、いらっしゃいますか?」
 令嬢が一人、研究室の扉の前に立つ。
 最初に彼女を迎えたのは、王子の同級生だった。
 彼は、オレンジ色の目を皿のようにして令嬢を凝視し、開けたばかりのドアの取っ手を握り締めた。
「どなた様でしょうか?」
 銀色のドレスを着た令嬢は、艶やかに笑った。
「ガーネットと申します」

「あー。びっくりした。まだ心臓がドキドキいってる」
 三年生の青年は、白衣の上から右手で左胸をつかんで、左手は机の上に乗せて体重をかけ、大きく息をついて肩を落とした。
「どうしたの? 王子のお客様が何か?」
 大学院生の女性が実験用の手袋をはめながらたずねると、すぐに数度のうなずきが返ってきた。
「ええ。とても珍しい種類の令嬢でした。」
「へえ。面白そうね。さりげなく見てこようかしら?」
「いや、止した方が、」
「どうして?」
 三年生は、首を振りながら、神妙で複雑な声を慎重に出した。
「どうも、人間じゃないっぽいような」



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