「魔法使いならクリスティーナと侍従長で間に合っている。いや、持て余している」
「そんなこと、私の知ったことではございません」
ガーネットは、両手を優雅に広げた。
「昨夜は負けましたけれど、今日は勝ちますわ? 遠慮なく色目で魂を抜いて差し上げます」
「? 負けたってどういうことだ?」
戦ったわけじゃないだろう、とこぼす王子に、ファセットの令嬢は、意外にも気分を害した。
「まあ! よくもいけしゃあしゃあと言いますわね? クリスティーナに守ってもらったでしょう?」
ファウナ王子は怪訝な顔をした。
「階段の話か?」
「舞踏会での話です!」
「嫌がらせなら受けたが?」
ガーネットは、話にならないというふうに、大きく息をついた。
「嫌がらせですって? 笑っちゃうわ」
「一体、何がいいたいのだ。話が見えない」
「憎らしいクリスティーナの株なんか上げたくありませんから、わたくし、これ以上何も教えることはございません」
魔法使いは、それ以上の言及を避けた。
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