シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

16 研究室

 ファウナ王子は大学に来ていた。
 現在、研究室で、指導教官や他の学生たちと、論文講読をしているところだった。
「興味深い論文だが……。しかし、この実験結果、誤差が気になる」
「やはり、用いた試料の数量が少ないからでしょうね」
「たしかに。十個の値段で小さな家が建ちますからね。だから、そうそう大量には使えないし」
「同情の余地も検証の余地もありますね」
 講読をしている学生は、三年生と四年生、そして大学院生の合計九人。教官は、助教授と助手が一人ずつ。
 研究室の構成員は、男子学生一二人、女子学生二人だった。フロラもその中に入っている。教官は、教授が一人、助教授が一人、助手が二人。
 研究対象は、建造物の住環境維持のために組み込むからくり。
 最初に研究を始めたのは、フロラの亡父カールラシェル教授だった。
 一一年前、カールラシェル教授が急死した。死亡する数日前に、教授は、自分の研究内容を記した書類を、全てどこかへ持ち去っていた。今の教授が当時の助教授で、研究内容は彼も熟知していたので、研究の進行にはそれほどの支障はなかった。ただ、カールラシェル教授の研究成果である論文の原本が行方不明になっていたことが、大変な問題だった。企業の研究機関に営利目的で盗まれて、特許でも取られては大変だと、方々を探した。だが、結局見つからずじまいだった。しかし、それから十年後の去年、彼の一人娘フローレンスと共に、それらも全て無事発見されて、現在はめでたしめでたしの状況となった。
「おや。そろそろ昼ですか」
 中年の助教授は、壁に取り付けられた時計を見上げた。この研究室で作った時計だった。
「今日はここまで。午後からは各々の研究を進めてください」



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