フロラは理学部の学舎に入った。
廊下の両脇には、植物標本が挿まれている色あせた紙束が、うずたかく積まれている。枯葉の香りと、かすかにアルコールの匂いが漂っている。
それらにぶつからないように、すっかり狭くなっている廊下を、早足で歩いていく。
標本の束が終わったら、岩石標本が、ガラスケースの中にたくさん置かれていた。
そして理学部の学舎を抜けて、工学部の学舎の前に出た。
安山岩で造られた高い建物。
学舎の中に入る。良く磨かれた廊下には、何の障害物も無い。各研究室間の取り決めによって、物を置いてはいけないことになっている。
物はないが、あちらこちらから、金属の擦れる音や、何か重いものがぶつかり合う音など、高低大小様々な音が響いてくる。
フロラは走り出す。
研究室は、三階にある。
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