「ファウナ王子!」
階段を駆け上ってきたフロラは、声を上げた。
廊下を歩いてくる人の中に、王子がいた。
同級生は、軽く口笛を吹いた。
「あ、フロラだ」
四年生は面白そうに笑う。
「どうしたんだろう。すっかりあわててるなあ。ここでは王子じゃ
なくて先輩って呼ぶように教えたんだけどな。そんなの頭の外にふ
っとんでるな」
「こんにちは。どうしたの? フロラ」
駆けてきたフロラに、王子は、どこか腕白な雰囲気で微笑みかけ
た。
フロラは、息を整えて、顔を上げた。
「王子。理学部の前で、今、姿を見かけました」
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