それだけで、王子はなんのことか理解した。
「そう……来たんだ」
表情が一転して、苦くなる。
「今のうちに逃げたら?」
四年生が勧めた。
「実験の後片付けはしておくからさ」
同級生が申し出た。
「回れ右をして、広場側に降りる階段を使ったらいいわ。広場を横切れば、王宮はすぐそこでしょう?」
院生が助言をした。
「ありがとう」
礼を言って、王子は駆け出した。
「行こう、フロラ!」
フローレンスの手を取って。
「逃げ切れよー」
三人の学生は手を振って見送る。
「あれ。フロラまで連れて行っちゃった」
同級生は瞬きした。
「しまった。今日は質問することがあったのに。カールラシェル教授の覚え書き……」
四年生は、肩をすくめる。
「それはまた明日になるわね。ああ、明日は日曜で無理か。二年生はお休みだものね」
院生は、二人の後姿を見つめて苦笑する。
「また来週。良い週末を」
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