「フロラ……」
王子は、自分のことを心配するフロラに、そしてそのきれいな微笑みに、心が揺らぐのを感じた。
今、ここで、想いを告げてしまいたい。
口を開きかけた王子に、フロラはやさしく微笑みかけた。
「いい方法がきっとあります。わたくしでよろしければ力になります。どうぞ、気を落とされないでください」
王子は、思いとどまった。
彼女は純粋に自分を思いやってくれている。
こんな状況で、私が自分の気持ちに正直になったら、フロラを巻き込んでしまう。
可哀想だ。
王子は、首を振って笑った。
「うん。大丈夫だよ。クリスティーナで慣れてるんだから。厳しい環境にはね」
「ふふ」
思わず笑みをこぼすフロラに、ファウナ王子は手を差し出す。
「行こう」
「はい」
駆け出す二人の背後、上の方で、すってん、と、音がした。
「痛ーい」
「ガーネット様! 大丈夫ですの?」
フロラとファウナ王子は、つい、振り返ってしまった。
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