シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

28 幸運な思い違い

 様々な薄い色のドレスをまとった乙女たちは、王子を発見した。
「まあ。ファウナス王子様」
 それぞれに愛らしい顔に、綿菓子のように甘い微笑みをふんわり浮かべる。
「こんなところにいらしたのですね」
「やはり二階で正しかったのですね。良かった。どのお部屋にもいらっしゃらないから、わたくし、思い違いをしていたかと不安になりましたの」
「王子様。わたくしたち、お昼をご一緒したいと思ってまいりましたの」
 美容、服飾、装飾の女神がいたとしたら、間違いなく、この令嬢たちは最大の祝福と寵愛を受けている。
 小作りで優美な甘い美貌。華奢な肢体。白磁のような肌。可憐な声。結い上げられ、巻き上げられ、編みこまれた髪。最上級の絹布のドレス。乙女たちの可愛らしさを引き立てる、朝露を付けたクモの巣のように繊細な宝飾品。
 学舎の階段に立っているにもかかわらず、彼女たちの背景には、宮廷の壮麗な舞踏会がほの見えるようだった。
「これは、ご令嬢方。ごきげんよう」
 王子は、表面上は、完璧な「王族の笑み」を浮かべた。
 上品で誇り高く、だが決して冷たくも圧迫感もない、非の打ち所の無い微笑みを。
 しかし内面では、真っ暗になっていた。
 見つかってしまった……。



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