「!」
扉に手をかけた瞬間、勝手に開いた。
フロラは驚いて手を引っ込めた。
「なにしてるのよ?」
扉の向こうには、プリムラが立っていた。
けして上機嫌とも爽快とも言い難い顔で。
フロラは静かに答えた。
「大声が聞こえたから」
「誰の?」
「クリスティーナさんの」
「入れば? いるわよ中に」
プリムラは、さっさと部屋を出て行った。
「待って」
フロラはプリムラを呼び止めた。
プリムラは面倒くさそうに振り返る。
「何? 朝食ならまだよ」
「そうではなくて」
フロラは首を振って、心配そうに聞いた。
「体の具合はいいの? 昨日は……」
「あなたが気にすることじゃないわ。じゃあね」
そっけなく言って、プリムラは歩み去った。
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