ガーネットは、「ええ!」と、自信を持って強くうなずく。
「そうですわ。冗談をおっしゃられたのです。『フローレンス嬢と二人だけで話をしてもよい』という、ご許可の言葉の代わりに、遠まわしな言い方をなさったのです」
どう考えても無理のある解釈の仕方に、乙女たちは困惑する。
「遠まわし。そうでしょうか……」
「ご冗談だったのですか?」
「まあ、そういった意味でしたの? わたくしは、てっきり……」
波紋に揺れる睡蓮の花のように当惑する乙女たちに、ガーネットは、雲間からのぞく太陽のようにやんわりと微笑む。
「皆様、何を戸惑ってらっしゃるの? 王子様がおっしゃったのは、ご冗談ですよ」
ガーネットは、王子の方を向いて、同じように微笑んだ。
「そうでしょう? 王子様?」
ファウナ王子は、すっと目をそらした。
ガーネットは、少し悲しそうに目を落とすと、再び乙女たちの方を向いて優しく微笑んだ。
「さあ、皆様。わたくしはフローレンス様とお話いたします。今日は王子様とお昼はご一緒できないようですし……」
乙女たちは、相手の気持ちを汲んで、それぞれにうなずいた。
「そうですね。では、わたくしたちはこれで失礼いたします」
「王子様、突然申し訳ございませんでした」
「ごきげんよう、王子様」
「ごきげんよう」
花のような乙女たちは、優美に愛らしく一礼して、素直に去って行った。
一人を除いて。
|