いま、階段の踊り場には、三人がいる。
背後にフロラを隠した王子。
壁と王子の間に立つフロラ。
二人の前に楚々と立つガーネット。
「困りますわ。王子様」
ガーネットは、桜の花がほころぶように、ふわりと微笑む。
「わたくしの友人は、とても繊細な者ばかりですの。温室に咲くバラのような乙女たちを、どうか驚かせないでやってくださいませ」
王子は優雅に微笑む。
「そうだね。あの令嬢たちはね。あなたは違うが」
「王子様……」
棘のある言葉に、ガーネットは悄然となって、床に目を落とした。
そして、悲しそうに、小さく息をついた。
薄いこげ茶色の巻き毛が、天使の吐息に触れたように、ふわりと揺れた。
再び王子を見上げたガーネットの容貌は、花嫁に送られる花束のように、得がたく美しい清らかなものだった。しかし惜しいかな、化粧をし過ぎの感もある。
「ファウナス王子様は、わたくしがお嫌いですか?」
長いまつげにふちどられた大きな瞳から、水晶細工のような涙がひとつ、はら、と落ちた。
王子は、決まり悪そうにはしていたものの、乙女の悲しみの涙からさえ目をそらした。
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