シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

33 王子、たしなめられる

 いま、階段の踊り場には、三人がいる。
 背後にフロラを隠した王子。
 壁と王子の間に立つフロラ。
 二人の前に楚々と立つガーネット。
「困りますわ。王子様」
 ガーネットは、桜の花がほころぶように、ふわりと微笑む。
「わたくしの友人は、とても繊細な者ばかりですの。温室に咲くバラのような乙女たちを、どうか驚かせないでやってくださいませ」
 王子は優雅に微笑む。
「そうだね。あの令嬢たちはね。あなたは違うが」
「王子様……」
 棘のある言葉に、ガーネットは悄然となって、床に目を落とした。
 そして、悲しそうに、小さく息をついた。
 薄いこげ茶色の巻き毛が、天使の吐息に触れたように、ふわりと揺れた。
 再び王子を見上げたガーネットの容貌は、花嫁に送られる花束のように、得がたく美しい清らかなものだった。しかし惜しいかな、化粧をし過ぎの感もある。
「ファウナス王子様は、わたくしがお嫌いですか?」
 長いまつげにふちどられた大きな瞳から、水晶細工のような涙がひとつ、はら、と落ちた。
 王子は、決まり悪そうにはしていたものの、乙女の悲しみの涙からさえ目をそらした。



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