シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

37 敵二人

「! クリスティーナ! なんとかしてくれ!」
 落下する王子が叫ぶ。
「どうしてフロラを巻き込むのです! 王子!」
 殺気だった声が、返ってきた。

 右腕にフロラを抱え、左手で王子を支えて、階段の終わりに魔法使いクリスティーナが現れた。
「しまった。しくじったわね」
 クリスティーナは、渋い顔でつぶやいた。
「フロラだけを助ければ良かったんだわ。階段から落ちて大怪我した王子をガーネットにくれてやれば、フロラが平穏な生活を送れるようになるのに」
 階上のガーネットが、なんどもうなずいた。
「そうそう。そうですわ。そうしたら、私が妃になって、落下したときの怪我が原因で一生寝たきりになった王子をいびりながら、贅沢ざんまいいたしましたのに」
「ああ、それはいいわね」  階下の魔法使いは、名案を聞いたという顔になった。
「それじゃ、もう一度やりなおそうかしら?」
 申し出を受けたガーネットは、まるで力強い援軍を得たかのように、王宮魔法使いに向かって、はずんだ微笑みを向けた。
「ええ! 結構でしてよ。クリスティーナ。では、わたくし、もう一度、王子を突き落としますわ」
「仕切りなおし決定ね」
 魔法使い二人は、話し合いによる合意を得た。意見の対立も無く。
「勝手に人をやりとりするな!」
 こめかみに青筋を浮かせた王子が、異を唱える。
 クリスティーナが冷たい微笑みで刺した。
「フロラが危ない目にあうのなら、あなたなんかいりません。ファセット家の『幻の姫君』に取り憑かれれば良いのです」
 階上のガーネットが、春日の微笑みを浮かべる。
「観念なさってください。私に気に入られたのが運のつきなのですから」



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