シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

38 落下

 令嬢の表情は、しだいにうっとりしてくる。
「わたくしって、なんて幸運なのかしら。私好みの年上の王子様がいらっしゃるのですから。王子様を篭絡して妃の座におさまり、傾国の美女として贅の限りをつくせるのですわ」
 そして、階段を下りようと、右足を一歩踏み出した。
「ファウナス王子。まわりくどく言い寄るのはもう止しますね? 今この場で色目を使って、てっとりばやく、あなたを私のとりこにしてさしあげます」
 可憐な彼女の、輝く小さな水晶の靴が、工学部の階段に乗せられる。
 が。
 滑った。
「きゃああああ!」
 ガーネットは、階段から転落した。
 その様は、まるで花期を終えて木上から落ちていく薄桃色の椿のようだった。
 しかし、音にはまるで情趣がない。
 ドガガガガ、という転落音と、ベシャッという激突音。
 魔法使いガーネットは、顔から派手に落ちた。
「大変! ガーネット様!」
 フロラは顔色を変えるが、
「いいのよフロラ。彼女は魔女だから」
 可愛い姪をがっちり抱えて、クリスティーナが平然と首を振る。
 クリスティーナの向こうにいる王子も、肩をすくめるだけだった。
「気にしないで、フロラ」
「で、でも……!」



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