「えっ」
クリスティーナは姪から責められて驚いた。
フロラは沈んだ表情でうつむきながら、つぶやいた。
「魔法使いになるためには、必要な修行なのかもしれませんけれど。厳しい言葉をかけるのも、修行のうちなのかもしれませんけれど」
そして顔を上げて、悲しそうな目で叔母を見つめた。
「でも」
フロラは、言葉を詰まらせた。
その先は、クリスティーナ自身が良心と相談の上で推量すべきことだった。
「フロラ……」
クリスティーナは、申し訳なさそうな表情になった。
「ごめんなさい」
叔母は、しおらしく謝った。
しかし彼女は、自分の行いを反省したわけではなかった。
その証拠に、こう続けた。
「私、あなたに心配をさせてしまったわね」
魔法使いは、かわいい姪を悲しませたことだけを、ただそれのみを悔いていた。
フロラは、まばたきをした。
自分の気持ちが通じていないような気がする。いいえ、通じていない。
「クリスティーナさん? 私が言いたいのは、そういうことではなくて……」
フローレンスは、足りない言葉を補おうとした。
しかし、叔母は、何故だかひどく憐れみ深い顔をして、大きく首を振った。
「わかっているわ! それ以上、何も言わなくていいのよ!」
クリスティーナは、愛するかわいい姪をぎゅっと抱きしめた。
「あなたを悲しませるようなことは、もう言わないわ! もう、あなたを二度と辛い目になんか遭わせたりしないと、私、心に決めたのだもの!」
「え……? クリスティーナさん? あの、そうではなく……」
「いいのよ! 心配しないで!」
クリスティーナは、困惑しきったフロラに、慈しみに満ちた微笑みを豪雨のように降らせた。
「安心してちょうだい。もう二度と、あなたに、修行の話なんか聞かせないからね? あんな聞くに堪えないみっともない話なんか、するものですか」
「違……」
しかし、フローレンスが訂正するのを妨げるかのように、部屋の扉がすぱりと開いた。
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