「フロラ、これ」
気を取り直して、王子はフロラに紙袋を渡した。
「ケーキが入ってる。王立病院の院長が作ったんだ。兄がもらったんだけど、あなたたちに食べて欲しいと」
フロラは立ち上がって微笑んだ。
「まあ。ありがとうございます」
袋を受け取る。
と、二人のお腹が同時に、ぐうと鳴った。
「……」
「……」
一瞬の静寂の後、二人はおかしそうに笑い合った。
「ふふ。そういえば、お昼はまだでしたね?」
「はは。そうだったね。今、何時だろう?」
「ちょっと見てまいります」
フロラは、床から歯車の中へ続く階段の方に歩いていった。
簡易な金属製の階段を登っていくと、時間を刻む歯車がある。
「もうすぐ三時です。王子」
歯車の中から声がして、階段を下りる足音が響く。
フロラが階段を下りて王子の所に来たときに、大広間に設えられた大時計が三時を告げる音楽を奏でた。
紙袋を持ち上げて、フロラが笑う。
「ちょうどお茶の時間ですし。ここで、一緒にいただきましょうか?」
王子は苦笑しながら、うなずいた。
「そうだね。当分出られないし」
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