袋を開けると、バタークリームで飾りつけされたカップケーキがいくつも入っていた。
「このケーキはね。当直明けの兄に、院長が『朝食に』って言って、持って来てくれたんだって」
「朝食……」
フロラは、クリームが築城されたケーキを取って、まじまじと見つめる。
「甘いものが好きなのですか? 先生は」
王子もケーキを手に取りながら答えた。
「いいや。甘党は院長の方だ。兄は、あまり」
「では、中を見てびっくりなさったでしょうね」
「見ただけで胃がもたれたから、すぐに閉めたって」
「ふふ」
フォークも何もないので、二人は手に持ってケーキを食べる。
扉のある壁を背にして、部屋の奥を前方に見て、二人はならんで座った。
「おいしい」
一口食べて、フロラが微笑んだ。
「お腹が減ってると、余計にね」
王子がうなずく。まろやかだがしっかりした甘さに、「渋いお茶が欲しいところだな」と思いつつ。
|