そう思うと、フロラに対する愛しさや守ってやりたいという気持ちがつのった。
「フロラ……」
王子は、ケーキを持つフロラの手を取った。
「はい?」
フロラは、どうして王子がこうするのかわからずに、不思議そうな顔をする。
きっとクリームの味がするんだろうな、と思いながら王子が顔を傾ける。
「お茶をお持ちしましたよ? 王子」
好々爺の声が響いた。
フロラから手を離し、がっくりとうつむく王子に、芳しい紅茶の香りが漂ってきた。
侍従長が、紅茶の入ったポットやカップなどが乗った盆を持って、立っていた。
客人に対しては、魔法使いの老人は暖かくほほえむ。
「フローレンス嬢。お手拭きと紅茶をお持ちしましたよ? さあどうぞ」
「ありがとうございます。……王子? どうなさいました?」
何も知らない乙女に、王子は顔を上げて優雅に微笑んだ。
「ううん。フロラの頬にクリームがついていたから、取ってあげようかと思ったんだけど」
|