「ふふ。王子も」
フローレンスは手を伸ばして、ファウナ王子の左頬にそっと触れた。
「ね?」
白い指先についた白いクリームを見せて、フロラが微笑む。
「本当だ」
苦笑する王子の前に、侍従長は紅茶を置いた。深意のある笑みを浮かべて。
「どうぞ、王子」
そして、すっと見上げて、渋い顔になる。
「しかし、感心しませんな? 相手の許可も得ずになんの断りも無く」
王子は目をそらしてうなずく。
「今回は礼を言う。良いところに来てくれた」
七割は心からの感謝だった。残りは違うが。
つい、取り返しのつかないことをするところだった。まだ告白の方がいい。
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