手をふいて、紅茶をいただき、皿とフォークをもらってケーキを食べ終えると、侍従長は一礼して消えようとした。
「待ってくれ」
それを、王子が呼び止めた。
「なんですかな? 王子」
「私たちも連れて行ってくれ。扉の外で待っている令嬢たちから逃げたい」
「なんと」
しかし、侍従長は、話にならないという様子で首を振った。
そして呆れた顔で王子をじっと見つめた。
「何をおっしゃられますやら。かしましい令嬢方をあしらえずにどうします?」
侍従長の瞳が厳しくなる。
「そのような逃げ腰で、一生寄り添える妃を見つけ出すことができましょうか?」
「私は、まだ、そんな気にはなれない」
不満げな王子に、老成した魔法使いは眉を上げてみせる。
「ほほう。そうですか。やる気がないと」
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