シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

6 朝の風景6

「せんせい」
 プリムラが鋭い微笑みで立っていた。
「遅くなりまして申し訳ございません。朝食の用意が整いましたわ?」
 もう、彼女の顔色は悪くなかった。
 蝋のようにきめの細かい肌に赤みがさしている。ついさっきまで、土気色で死人のようだったのに。
 冷笑を浮かべて慇懃無礼な声を紡ぎ出す余裕すらある。
 応じるクリスティーナは、雲ひとつ無い青空のようにさわやかに微笑んだ。
「ご苦労様」
 まだまだその笑顔のままで、言葉を続ける。
「まあ、すっかり元気になったみたいね? やっぱり魔女ねえ。睡眠や休息の量なんて、回復の早さにはほとんど影響しないものね」
 そこまで言い終わると、いきなり、笑顔と表情が暗転した。
「今日はどこに叩き込んでやろうかしら?」
「クリスティーナさん! ひどいことはしないでください!」
 フロラがあわてて止める。
「あなたは口出ししないでちょうだい」
 冷たい声がフロラに向けられた。発したのは、フロラにかばわれたプリムラ自身だった。
「ガキ。フロラに命令するんじゃない」
 そのプリムラに、クリスティーナが氷の刃のような声を投げる。
 プリムラは、美しい銀の瞳を冷淡に細めた。
「失礼いたしました。師匠」



←戻る次へ→

inserted by FC2 system