「せんせい」
プリムラが鋭い微笑みで立っていた。
「遅くなりまして申し訳ございません。朝食の用意が整いましたわ?」
もう、彼女の顔色は悪くなかった。
蝋のようにきめの細かい肌に赤みがさしている。ついさっきまで、土気色で死人のようだったのに。
冷笑を浮かべて慇懃無礼な声を紡ぎ出す余裕すらある。
応じるクリスティーナは、雲ひとつ無い青空のようにさわやかに微笑んだ。
「ご苦労様」
まだまだその笑顔のままで、言葉を続ける。
「まあ、すっかり元気になったみたいね? やっぱり魔女ねえ。睡眠や休息の量なんて、回復の早さにはほとんど影響しないものね」
そこまで言い終わると、いきなり、笑顔と表情が暗転した。
「今日はどこに叩き込んでやろうかしら?」
「クリスティーナさん! ひどいことはしないでください!」
フロラがあわてて止める。
「あなたは口出ししないでちょうだい」
冷たい声がフロラに向けられた。発したのは、フロラにかばわれたプリムラ自身だった。
「ガキ。フロラに命令するんじゃない」
そのプリムラに、クリスティーナが氷の刃のような声を投げる。
プリムラは、美しい銀の瞳を冷淡に細めた。
「失礼いたしました。師匠」
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