シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

60 侍従長の苦言2

 軽くうなずいた後、年老いた顔に、穏やかながらも老獪な笑みが作られた。
「では言い方を変えましょう。これは、将来、妃を迎えた時に困らないための訓練です」
「どういうことだ? 言っている意味がわからない」
 王子は渋い顔をする。
 侍従の笑みが、深いものになった。
「こういうことです。たださえずるだけのスズメのような小娘たちから逃げるようでは、妻帯した後、毒蛇のような性悪女たちから妃を守ることなど、とてもとてもできたものではありません。それとも、」
 老翁は、視線を鋭くした。
「それとも、今のように逃げますか? 蛇穴に放り込まれた小兎のような妃を放って」
 王子は、意外な方向から雪つぶてを投げつけられたような顔をした。
 侍従長は、若い主を見て軽く笑ってから、消えた。
「私があなたを助けないのは、そういうことです。それでは。ご健闘をお祈りいたしますよ。王子」



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