シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

62 いいんだ。大丈夫

「フロラ」
「ファウナ王子」
 二人は、同時に名を呼んだ。
 王子は、向かい風を受けるような凛とした表情で。
 フロラは、風が健やかに吹き抜けることを願うような表情で。
 だから、お互いに不思議そうな顔をした。
「どうしたの? フロラ」
「ファウナ王子こそ、どうなさいました?」
 王子は、心配そうなフロラに、微笑んでみせた。
「私は後で言うよ。お先にどうぞ?」
 フロラは、じっと王子を見上げた。
 北の海のような青い瞳が、その深い色合いと同じくらいに、優しさを満たしていた。
「どうか、気を落とされないで」
 王子は、首を振った。
「……うん。ありがとうフロラ」 
「私で役に立てることがあれば、お手伝いいたします」
「ううん」
 王子は、フロラの申し出を、そっと断った。寄り添って咲く野の花のように、小さいけれどかけがえのない優しさを。
 そして、強く微笑んだ。
「いいんだ。大丈夫」



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