フロラは、言葉を失っている。動きも止まっている。
深い海のような瞳は、まるでお人形の目のように、見開かれたまま動かない。
乙女があまりに驚いているので、王子は内心で「大丈夫かな」と心配しながら言葉を続けた。
「ごめん。びっくりさせたね。返事は、いつでもいいんだ。私もまだ、研究に取り組みたいと思っているし。それに、決心もついた。妃になろうと血眼になっている令嬢たちや、縁組を望む周囲を相手にして、戦うよ。だから」
王子は強く笑った。
「私は大丈夫だよ。フロラ。もう、優しいあなたに助けてもらったり、思いやってもらわなくても。あなたは、自由になれたのだから。自由に生きて」
そこまで聞いて、フロラは、はっとした。
驚きのあまり、意識が吹き飛んでいた。
急いで、言葉を返す。
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