「え? あの、ちがいます、王子。そうではなく」
しかし、王子の考えは、戸惑うフロラによって打ち消された。
「違う……?」
王子は、どんな顔をすればいいのか迷いながら聞き返した。
王子と目が合ったフロラは、恥ずかしそうにそっとうつむく。
「はい。わたし、そういうことを、今まで考えたことがなくて……」
フロラは、逡巡しながらも、自分の誠意を伝えるべく、一生懸命顔を上げた。
「男の方との交際なんて、考えたことがないのです。父との約束を守るのに夢中で。それが、今までの私の全てでしたから……」
桜色の頬が、ふわりと赤くなった。
「どうしましょう……わたし」
そこまで言って、再びうつむいた。
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