シンデレラ2 後日談

すぎな之助(旧:歌帖楓月)

7 朝食1

 一階にある広い庭が見渡せる部屋。ここで、三人は朝食をとる。
 南に面した窓からは、パンジー、桜草、ひなげし、チューリップ、など、春の花々が虹のような色彩で咲き誇っていた。
 焼きたてのパンの香ばしい香りが、食欲をそそる。
 切りたてのオレンジの甘酸っぱい香りが、気分を明るくする。
 ふんわりしたプレーンオムレツの香りが、できたての湯気と共に立ち上る。
 野菜サラダのみずみずしさが、元気をわけてくれる。
 紅茶の芳しい香りが、まるで貴婦人のように優雅にたたずんでいる。
「大学、今日は何時からなの?」
 もう愛しくてたまらないといった微笑みで、クリスティーナは姪にたずねる。
 フローレンスは、オムレツをフォークでとりながら、微笑んだ。
「今日は一限目から。二限目まで講義を受けて、午後からは研究室の方へ行きます」
「そう」
 クリスティーナは、紅茶を一口飲んで、続けた。
「王子も一緒?」
「研究室の方でご一緒します」
 フロラの浮かべている微笑みに、可笑しさが混じる。
「でも、今日はいらっしゃるかしら? 昨日は、研究室に令嬢が何人も立ち寄られたから」
「あらまあ」
 クリスティーナの口元から、こらえきれない笑い声が漏れた。
「フフフ。とうとう大学にまで来るようになったの?」
「はい。特に、ファセット家のご長女様が積極的でらっしゃって」
 魔法使いは、もう一口、紅茶を飲むと、あいまいな笑みを浮かべた。
「ファセット家の長女? ああ、『幻の姫君』ね」
 フロラは、首を傾げた。
「え?」



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