王子は、張り詰めていた心を、和らげた。
雪を溶かす陽光のように、暖かく微笑んだ。
「いいんだ。フロラ。返事は、できるようになってからで、いいんだ」
フロラは、申し訳なさそうに、王子を見上げた。
「ごめんなさい、王子……」
「ううん。ね、フロラ。それまでは、私とは今までどおり接してもらえる?」
王子は明るくたずねる。
フロラは、恥じらいの微笑みを浮かべて、うなずいた。
「……はい」
「よかった」
王子は、ほっとした。
そして、優雅に笑った。
「では、フローレンス嬢。今晩の舞踏会でお会いしましょう」
フロラは頬を赤く染めながら、微笑んだ。
「はい。ファウナス王子」
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