優雅に一礼して、王族の座す壇上から降りると、王子は侍従を従えて、大広間の入り口へと歩き出す。
それに伴い、たくさんの令嬢たちの熱い視線が動く。
残った家族は、なかば呆然と言い合った。
「いきなり変わったものだな」
「昨日まであんなに嫌がっていたのに」
「相手がいるなんて素振りは一つも見せなかったのに。実はいたのねえ」
「新しい言い訳……にしては、えらく堂々としていたな」
父と母は、急にたくましくなった五番目の息子の背中を見つめながらささやきあった。
「言うのも震えをおぼえるが、ク、クリスティーナから何か悪知恵を吹き込まれたのではないか?」
困惑しきりの王に、王妃は微苦笑した。
「王。魔法使いクリスティーナは、あなたが思っているほど、恐ろしい者ではありません」
母は息子の背を穏やかに見送った。
「子供が大人になるのはあっという間です。きっと、あの子自身が成長したのでしょう」
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