万の物語/四万ヒット目/四方山話〜賢者達のお家事情〜

四方山話〜賢者達のお家事情〜

すぎな之助(旧:歌帖楓月)




東賢者のお家事情

ノウリジ:
 よーし、いよいよ最後の訪問先だ。
 東の賢者ソフィアのところに行ってみよう!
 東の象徴色は緑。賢者ソフィアは四方唯一の女性だ。巫女は彼女の娘、優奈(ゆうな)。東の気候は暑くて乾燥してる。
 そうそう、東賢者だけは、住居を二つ持っているんだ。
 一つは東の果てにある大きな館。そこに新殻衛兵も累機衆も住んでいる。
 もう一つは東の都にある小さな家だ。二人は、そこにいる方が多いな。今回も二人はそこにいるはずだ。
 それでは場所移動。

(東の都。郊外の住宅地)
ノウリジ:
 はい到着。えーと、郊外の住宅地だな。4人家族が暮らすにちょうどいいくらいの大きさの建売住宅がひしめいてる。
 その中にある、ここらでは普通の二階建ての家が、ソフィアの住居だ。
 ……お! 巫女優奈が、家の前にしゃがみこんでるぞ。
 なにやってるんだ?
 (三軒くらい前の路上から、巫女の様子を伺う)

優奈(外見年齢8歳 桃色の波打つ長髪、水色の目):
 ……。
 (道端にしゃがみこんで、無言で地面を手のひらで撫で回している)
 ……。

ノウリジ:
 (その姿を見て困惑)
 う、うーん。
 相変わらずの不思議少女ぶりだなあ。
 (困惑)
 優奈の外見は、たいてい小さな女の子なんだ。大人になることなんて、ほとんどない。
 よし、ちょっと声をかけてみよう。反応がまた、不思議なんだ。
 おーい! 優奈!

優奈:
 (声のした方を見る)
 ……。
 (瞬き)
 ……。
 (すっくと立ち上がり、じいーっと、ノウリジを注視)
 (ふたたびしゃがみこんで、じいーっと、ノウリジを注視)

ノウリジ:
 ほらな、不思議少女だろ?
 (優奈の方へ歩いていく)
 よう、優奈。
 (ノウリジもしゃがむ)
 お前のかあちゃんいるか?

優奈:
 ……。
 だれ?

ノウリジ:
 ……。
 (だれって? 俺のことを誰かって言ってるのかな?)
 うーん、俺のことわかるか?

優奈:
 (うなずき)

ノウリジ:
 よしよし。
 お前のかあちゃんはいるか?

優奈:
 一人いる。

ノウリジ:
 ……。
 (ううーむ)

優奈:
 (桃色の服のポケットをあせくる)
 (ぐっちゃりつぶれたミカンを取り出す)
 あげる。
 (プレゼントフォーユー)

ノウリジ:
 (呆然)
 ……。
 (これは好意の表現なんだろう。たぶん)
 ありがとう。
 (受け取る)
 優奈のお家に入っていいか?

優奈:
 ゆうなのおうちは無い。

ノウリジ:
 (所有権の話か!?)
 ええと、じゃあ、優奈のかあちゃんのお家に入っていいか?

優奈:
 うん。

ノウリジ:
 (ようやく家に入れる。ホッ)
 (家の敷地内へ歩き出す)
 (振り返る)
 優奈、来ないのか?

優奈:
 (しゃがみこんで、再び地面を撫で回してる)
 (顔を上げる)
 おなかいっぱいだから。

ノウリジ:
 おお、なるほど。
 (ハッ!? 納得してしまった……)
 じゃー、俺は行くからな?
 (ソフィア宅の玄関に立つ)
 門から入って5歩で玄関だ。玄関前は一段高くなって、扉がある。
 ソフィアー! ノウリジだ! 遊びにきたぞー!

 (家の中からバタバタと足音がする)
 (勢いよく扉が開く)

ソフィア(茶色の短髪、緑色の瞳、男前):
 ノウリジ! いらっしゃい!
 (威勢がいい)
 どうぞ入って?
 ところで、ねえ、その辺で優奈見なかった?

ノウリジ:
 (背後を指さす)
 家の前にいるぞ?

ソフィア:
 ええッ!? ああッ! 本当だわ! ……きづかなかった。
 (ショックを受けた様子)
 優奈っ、優奈ちゃーん!
 (一目散に娘巫女のところへダッシュ)
 (しゃがんでる娘を背後から抱え上げて髪の毛に頬すり)
 よかったー! どこに行ったのかと思って、心配したのよ!?
 今日は何も無いわよね!?
 (昨日、優奈がやったことはこちら

優奈:
(ゆっくりと振り向いて一言)
 お腹すいてないから。

ソフィア:
 ? ……そ、そう。
 (母でも理解不能)

ノウリジ:
 (感銘)
 うーん、不思議少女だなあ。
 あ、そうだ。凛からお菓子をあずかってたんだ。優奈にだってさ。

ソフィア:
 え、凛のお菓子……?

ノウリジ:
 うん。どっかの星に、お菓子作りを修行しに行ったんだってさ。うまかったぞ?

優奈:
 凛?
 (二人の方を振り向く)
 (立ち上がって、無表情でぴょんと飛ぶ)
 凛?

ソフィア:
 (娘の行動に微笑み)
 そうよ。西の凛さんよ? 優奈をお散歩に連れていってくれる、凛さん。
 凛さんがね、優奈にお菓子を作ってくれたんだって。

優奈:
 優奈にお菓子……。
 (沈思)
 えへ。
 (珍しく笑う)

ノウリジ:
 おおっ!
 優奈が笑ったぞ!
 (食い物で釣ればいいんだな!)

ソフィア:
 よかったわねえ、優奈。
  (ニコニコ 娘が笑ったので嬉しい)
 おうちに入って食べましょうか?

優奈:
 うん。
 (二人の後を着いて家に入る)

(玄関を入って右に小さな居間がある。ノウリジはそこに通されてソファに腰掛る。)

ノウリジ:
 はー落ち着くよなあ。
 (伸び)
 ソフィアの家って、いいよなー。気さくな感じでさあ。(庶民派)

ソフィア:
 そお? ありがと。
 日々の生活にはこれくらいでちょうどいいのよね。
 (ノウリジからもらった、お菓子の入った紙袋を開ける)
 あらおいしそう。
 凛が作ったのは、焼き菓子だったのね。それじゃ、紅茶にしましょう。
 (自分もソファに座り、机の上に置いてある茶器で準備)

優奈:
 (ノウリジの膝の上によじのぼる)
 だっこ。

ノウリジ:
 お? いいぞー。
 ほらおいで。
 (優奈受け止めて、膝の上だっこ)

ソフィア:
 ふんふん?
 (二人の姿を感心して見ている。)
 優奈はノウリジが好きなのよねえ。この子は、あんまりそういうことしたがらない子なのよ?
 ねえノウリジ、うちの優奈をお嫁さんにしない?

ノウリジ:
 へっ?
 (汗)
 いや……、こんなちっちゃな子だぞ……?
 それ犯罪だろ……と言いたいけど、俺たち、人間の法は関係ないか。
 その、なんだ、社会通念上、よくなくないか?

優奈:
 (ノウリジの膝の上で、無邪気に足をぷらぷら動かしている)

ソフィア:
 ちっちゃい、だなんて。
 (瞬き。少し呆れる)
 ちっちゃくなんかないわよ?

ノウリジ:
   いや、見た目も中身も子供だし。
 なんだその、俺としては(雪葉ちゃんが好き、と言ったら北の賢者が聞きつけて制裁を加えそうなので自粛)、えー、なんだ、優奈はどう考えても「ちっちゃい優奈」だぞ?
 えーと、なんでこんな話に……?

優奈:
 (ソフィアから入れてもらったお茶をずずーとすする)
 お菓子。
 (後ろ振り向いて、ノウリジにねだる)

ノウリジ:
 お菓子?
 (話がうやむやにできそうな予感)
 おお、やるやる。どれがいい?
 (いそいそ)
 (卓上の菓子皿を取って、優奈に見せる)

優奈:
 ぶどうのついたの。

ノウリジ:
 よしよし。
 (取ってあげる)
 ほら見ろよソフィア。これって、どう考えても子守だろ? ハハハハハハ。
 (笑い飛ばす)
 お母さん、余計な気を回しすぎだよ。ハハハ。
 (よしよし、これで話を逸らせそうだ)

ソフィア:
 むう……。
 (そう軽く受け流されると、母として少し不満)
 まあそれはそうなんだけどね?

優奈:
 あー。
 (ノウリジに口開ける)

ノウリジ:
 はいよ。あーん。
 (もはや餌付け感覚)
 よーし食え、うまいぞー?

ソフィア:
 ふふん。
 (瞳に鋭い光がキラリ)
 (すかさず)
 ちょっと優奈、「お姉さん」になりなさい。
 (主としての命令)

ノウリジ:
 はぁ? なんでだよ?
 (相手の意図がわからん)

優奈:
 (こっくりうなずく)
 (変化)
 あー、
 (引き続き、お菓子をねだる)

ノウリジ:
  うわ!
 (ソフィアの意図理解)
 (赤面)
 ソフィアお前!

ソフィア:
 ハハハハ! 顔真っ赤だよー、ノウリジ君?
 ほらほら子守子守、気にしない気にしない!
 アハハハハ!
 (笑い転げ)

ノウリジ:
 (ドキドキドキ)
 ソフィア、優奈に戻れって言えよ!?
 (南賢者、超絶美女を抱っこして立ち往生)

優奈:
 あー
 (泡を食っている相手には構わず、あくまでお菓子を要求)

ノウリジ:
 ちょ、
 (あああ、なんだよこの構図!)
 (わたわた)
 ちょっと待て優奈、自分で食え。なっ? これ、やばいって。

優奈:
 (お菓子をくれない相手にムッ)
 ちょうだい?
 (ノウリジに迫り)

ノウリジ:
 うわああ!
 (わたわた)
 降りろ優奈っ、

ソフィア:
 ハハハハハハハハ!
 (大笑い)

ノウリジ:
 笑ってる場合かー!? お前ッ、優奈の母さんだろ!?

ソフィア:
 私が笑ってるのはノウリジの慌てっぷりがおかしいからよ? アハハハハ!
 (ソファに転がって大爆笑)

ノウリジ:
 バカー! 母としてそれでいいのか!?
 こ、こういう、こんな大人にさせて客をからかわせるのはどうかと思うぞ!?

ソフィア:
 なぁに言ってるのよ? 子守だって言ったのはノウリジでしょ? さあさあ、お菓子をやってちょうだいな?

優奈:
 お菓子、
 (実力行使。ノウリジに圧し掛かり)
 ちょうだい、
 (押し倒し状態)

ノウリジ:
 こ、こここ、こら、優奈、
 (頭真っ白)

優奈:
   ちょうだい。
 (真っ赤になってるノウリジが持ってる焼き菓子+指に、ぱくっとかぶりついてお菓子食べる)
 (もぐもぐもぐ)
 (飲み込み)
 (うまかった。)
  もっと。

ノウリジ:
 ……へ、
 (あらぬ想像をしてしまう健全な青少年賢者)
 いやいやいや、
 (ぶるぶるぶる、と首を振って想像抹消)
 ちょっと、お母さん! お母さんッ! 娘さんを何とかしてくれー!
 (半泣き)

ソフィア:
 何泣いてるの、子守よ、子守でしょう?
 ノウリジ、あなたこそ、子どもじゃないんだから、それっくらいなんとかしなさいよもう。
 ハハハハ!
 (笑いまくり)

ノウリジ:
 こ、子供じゃないからかえってまずいんだぞお母さん!

ソフィア:
 ハハハハ!
 (豪快に笑い飛ばし)

優奈:
 もっと。
(迫)

ノウリジ:
 うわ……。
 (困窮)
 だ、台の上にあるからさ? 起き上がって自分で食べな?
 (土壇場お行儀指導。)

優奈:
 (むう)
 (首を振って「いやだ」の意思表示)
 あー。
 (口開ける)

ノウリジ:
 う……。
 (冷汗油汗)
 し、しかたねえなあ。
 (観念)
 (手探りで卓上のお菓子つかみ)
 はい、あーん。

優奈:
 あー
 (ぱくり)
 おいしい。
 (にこり)

ソフィア:
 きゃー! 優奈が普通にしゃべった! 笑ったわ! きゃー!(育児をする母の喜び)

ノウリジ:
 おいお母さん!? 他人の迷惑も考えろよ?

優奈:
 ……めいわく?
 (じっと見つめる)
 めいわく?

ノウリジ:
 いや迷惑じゃな、いや、あの、
(迷惑じゃないところが迷惑なんだけど、……優奈が聞くな!)
 ……えと、優奈、起き上がれ?

優奈:
 めいわく?
 (じっと見つめる)

ノウリジ:
 (どきどきどきどき)
 (いや子守子守。子守してるんだ俺は! 大人になれ俺!)
 迷惑じゃないからな? さ、起き上げれよ、優奈?
 (一生懸命笑顔)

優奈:
 (うなずき)
 (起き上がり)

ソフィア:
 (にこにこ)
 戻っていいわよ優奈。

優奈:
 (うなずき)
 (変化)
 (お子様)

ノウリジ:
 (ほうほうの体で起き上がり)
 ……ソフィア……、もっとはやく、もっとはやく命じて欲しかった。
 (疲労困ぱい)

ソフィア:
 あははは。
 (のんきな母さん)
 おつかれさま。

優奈:
 (卓上から焼き菓子取る)
 (ノウリジに差し出す)
 あー?
 (食べて?)

ノウリジ:
 ……お?
 くれんのか?

優奈:
 (うなずき)
 あー?

ノウリジ:
 あー。
 (優奈の手から、お菓子を食べる)
 (むしゃむしゃ)
 うまい。ありがとな。優奈

優奈:
 えへ。
 (にこり)
 だっこ。
 (再びよじのぼり)

ノウリジ:
 はいよ。
 (優奈をだっこ)
 やっぱお子ちゃま優奈が一番だよ。
 ソフィア、優奈の子守は絶対これで頼むぜ?
 っていうか、大人にして外に出したらえらいことになるから、やめとけよ?

ソフィア:
 はい? 優奈はノウリジにしかそんなのしないわよ?

ノウリジ:
   あ、ならよかった。
 (ホッ)
 そうだよなあ。こんなこと誰にでもやってたら問題あるよなあ? ははは。

ソフィア:
 ……。
 (呆れた。)
 (私が言った意味わかってないみたいね。鈍感なんだからもう。)
 そうよ。
   (自分で意味がわかるまで、ほっとこ。)
 だから安心して子守してちょうだいね?

ノウリジ:
 おう、わかった。……じゃなくて、心配するのはお母さんの役目だろ?
 (優奈の頭なでる)
 な、優奈?

優奈:
 (うなずき)
 えへ。
 (ごきげん)

ソフィア:
 はいはい。
 (苦笑 わかってないんだから)


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