女子高生の異世界召喚「君こそ救世主?」物語
Magic Kingdom

歌帖楓月



114 こんな世界の物語

「リキシア。兄さんって、人気者なの?」
 玉座にて、大きく首を傾げた闇の女王陛下が、彼女の目の前で輝く妖精にたずねた。
「どういう意味ですか?」
「だって、あの沢山の手紙。私、びっくりしちゃった」
「……」
 困ったように微笑んで、光の妖精はふわりと飛んで、小さな女王陛下の左肩に腰を下ろした。
 途端、彼女の輝きは消えうせて、小さな貴婦人となる。
「そうでもあり、そうでなくもあり。むずかしい質問ですね」
「そうかしら?」
「ええ。エドガーは、『これは、どちらかというと、夢見る少女達の数だね』と言っていましたよ」
「『夢見る少女』?」
「そうです」
 にこやかにうなずく光の妖精に、小さな女の子は顔を渋くした。
「少女達は夢を見たら、兄さんに手紙書くの? 昨日見た夢はこうでした、なんて、報告でもするのかしら? わからないわねえ」
「ふふふ」
 リキシアは、女王らしからぬ、「子どもらしい質問」が聞けたので、かえって微笑ましく思い、顔をほころばせた。
「あら。これは笑うべきところなの? リキシア」
「いいえ。真面目にお答えすべきところですね。ティカ」
「リキシアったら」
 肩をすくめた女王は、うながした。
「では私の疑問に答えて頂戴? 異世界とこちらを行き来する光輝の妖精よ」
「女王陛下の仰せのままに」
 ハニール・リキシアは、女王の肩から浮き上がり、光を取り戻し、御前にて申し上げた。
「わたくしは、異世界の作家エドガーブラウンと交流がございます。エドガーは、わたくしから聞いた話を元にして、想像を膨らませ、作品に仕上げます」
「『作品』ですって?」
「物語をこしらえるのですわ」
「……この世界の物語を?」
「そうですよ」
「どんな物語を?」
「こども向けの物語を」
「なんですって?」
 ティカは目を丸くした。
「まあ。こんな世界の物語、それもこどもむけ? 想像できないわ」
「あら」
 妖精は、からかい含みに、女王と同じく目をまん丸にしてから、おっとり返した。
「わたしたちにとっては当たり前のことでも、異世界の人にはそうではないかもしれませんよ?」
「そんなものかしら? どこの人間もそう変わらないと思うけど。なんにせよ、大儀なお仕事だわ」
「エドガーに、女王がねぎらいの言葉を掛けていたと伝えましょうね。きっと涙を流して喜び、そして肯定と否定とをするでしょう。『優しいお言葉いたみいります。しかしこれが私の生業であり、それゆえに辛く、そして楽しみでもあるのです』……といったところでしょうか」
 ティカは、「わからないわねえ」と、むつかしそうな顔をした。
 妖精は笑った。
「ティカは女王陛下であらせられますから」




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