女子高生の異世界召喚「君こそ救世主?」物語
Magic Kingdom

歌帖楓月



4 魔法使いの証し

「最初の一人は、この先の屋敷に住んでるんだ。ユエという名前の、見た目は、君と同い年くらいで、女の子の魔法使いだよ」
 森に囲まれた納屋を出て、森を抜けると、街が広がっていた。石畳で石作りの家や店が立ち並び、道行く人々は三角棒や頭巾やマントを着ていて、童話に出てくる魔法使いそのものだ。それが、いっぱいいる。本当に住民全部が魔法使いなのだ。
「へえ」
 明理沙は、珍しそうに街の全てを見回す。
「全員『魔法使い』なのねえ……」
 感心したようにそうつぶやくと、意外にも、カイは否定した。
「ううん。魔法はみんな使えるんだけれど、『魔法使い』って正式に呼べる人には決まりがあるんだ」
「なにそれ?」
「証しがないと駄目なんだよ」
「あかし? 証しって?」
「……ほら、街の人々を良く見てごらん。気付くことがあるはず」
「うん」
 じっ、と、街ゆく人々を見渡す。みんな魔法使いの格好をした人ばかりだ。マントをつけてる人間ばかりだ。が、明理沙がイメージする魔法使いの姿にはないものを、ぶら下げている人が多くいた
「ねえ、あの、大きな星のペンダントってなんなの?」
 明るい金色の、手のひらほどもある大きさの星形のペンダントをしている人が沢山いる。
「それそれ」 カイは得たりと笑った。
「ゴールドスターっていうんだ」
「ゴールドスター? ……もしかして、それが証しなの?」
「そうさ。これを持つものだけが、本当の魔法使いなんだ」
 魔法使いになるにも、そんなものがいるのか。
「じゃ、こんなふうなの? 修行か何かをして、ある程度のレベルに達したら、魔法の先生か王様かが、あの星をくれるのね?」
 なんだか、小さいころに幼稚園の先生からもらった「良くできましたで賞」のようだ、と、ほほえましく思いながら明理沙がそういうと、「ううん。違うよ。人からもらうものじゃないんだ」と、否定されてしまった。
「もしかしてあれは自分で作るの?」
 ぷっ、と、カイが吹き出した。
 明理沙はむっとした。
 知らないから聞いてるのに。
「ご、ごめん。いや……、いや、そうだったら、いいんだけど。ゴールドスターっていうのは……明理沙には信じられないだろうけれど、」
 くすくすと笑いながら、カイは空を指さした。
「空?」
「うん。夜空の星。今は昼だけど」
 すこし、苦い表情をした後、カイは続けた。
「『魔法使い』にふさわしい人には、夜空で金色に輝いている星が降ってくるんだ。『自分は正式な魔法使いである』と、夜空に誓ったならば。でもその誓いは一生でたったの一回だけしかできなくて、もしも、その時ゴールドスターが降ってこなかったら、一生、その人は魔法使いではないんだ」
「星が決めちゃうの? その人が魔法使いかどうかを? ……すごい話。まるで運試しみたい」
 カイは、はっきりと苦笑してみせた。
「へへ。……信じられないだろ? でも、ゴールドスターが降ってこない人は、確かに魔法の力が弱いからね。運じゃない。不公平じゃ、ないんだよ」
「ふーん」
 空の星が身の証しになるなんて運命的だなあ、と、明理沙がつくづく感じていると、カイは、さらに、思い出したかのように付け加えた。
「そうだ。一つだけ、『シルバースター』っていうのもある」
 シルバー、銀の、星。
「へえ。それは、魔法使いと違うのね?」
「うん。シルバースターを持ってる人は、……特別だね」
 というと、カイは、また暗い顔になった。
 明理沙は問い重ねる。
「良くないの? シルバースターって?」
 あわてて、カイは首を振って否定した。
「いいや……良いとか悪いとかじゃなくて! でも、まあ、うん。そのうち、その人に会えばわかるよ」
 なんだか奥歯に物の挟まったような言い方をする。なにかまた、事情があるのかもしれない。
「ふうーん。きっと複雑なのね」
「……うん」
 明理沙は、心の中で息をついた。
 事情が、はっきりと見えない。




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